『最近観た映画:風景とまなざしの意味するところ 』
(area045 横浜の建築家 建築家のコラム第122回掲載文) 「長江哀歌」を観た。傑作だと思う。
感動したと言うのとも違う。強く「見てよかった」と思うのだ。
中国映画はほとんど見ていない。なんとも言えないコミュニケーションの不能性を勝手に感じていて、親しみを感じ得ず食わず嫌いの関係となっていた。
今回は映画フリークの友人から「ぜひ見ろ、全編廃墟の風景が舞台だぞ」の一言に突き動かされて出かける事となった。
話は簡単である。時制は現在形の中国。過去の中国、現代の中国それぞれを表徴する中年男と若い女が登場し人探しの旅をしている。二人は何の関わりもなく、交差する場面もなくそれぞれの事情をもって同じ街に登場する。中年男も若い女の夫も男たちは出稼ぎに出た事でその妻との永い不在の関係にある。それを埋めようとしあるいは清算しようとする旅である。中年男は16年もの不在の間に新たな生活を営んでいる妻と遭遇し、すべてを受け入れ妻を身請けする稼ぎの為に新たな旅に出る。若い女は自分の新しい生活の為に、探し当てた夫に別れを告げて去る。ストーリーはそれだけ