『むかし観た映画』
(area045 横浜の建築家 建築家のコラム第72回掲載文) 建築家になりたい、と想い定めるずっと前からよく映画を観た。
もっともその頃は映画が最もポピュラーな娯楽でありそれ以外に大衆が気軽に楽しめるものがなかったのだから当然な対象ではあったわけだ。
特別な体験としての「ターザン」「西部劇」が一番鮮やかに記憶にある。
のどかな田舎で家から1キロほど離れたところにバス停があった。そこには映画広告の掲示板があってポスターの四角が、そこだけ輝く夢の窓のように見えていた。貼り変わるたびに友達と連れだって、それを観るためだけに何度もたんぼ道を通って、しばし眺めては、映画館のある街へバスで出かけるわくわくする気分を想像しながらそこを離れがたく、ポスターを振り返りながら何となくうろうろとしていた。
初めて観た西部劇「オクラホマキッド」初めてみたターザン「ターザンの逆襲」。「荒野」といい「ジャングル」といい初めて観る光景にあっという間に我を忘れて感情移入し、ぼくは見晴るかす平原を孤独にさすらい、枝から枝に空を切り、恐ろしい土人(今や死語!)に恐怖して小さく