『最近観た映画』
(area045 横浜の建築家 建築家のコラム第38回掲載文) 「エレニの旅」、テオ・アンゲロプロス監督最新作を観た。3部作予定の第1作目といわれる。
戦争の世紀と言われる20世紀を、それを生きたエレニ(ギリシャという国名の愛称でもある)という女性の半生記として描かれる。エレニとは同時代を生きてきた監督の母(この作品は彼女に捧げるとされる)に代わる存在でもある。
エレニはロシア革命のためにオデッサを追われ難民として故国を目指さざるを得なかった、親を失った少女として登場する。
画面奥からこちらに向けてゆっくりと近づいてくる、一団の人々。
見わたすかぎりの荒涼とした大地。白く、かがやくでもなく、ただ白く広がる天。
全員が黒っぽくコートに身を包みカバンをさげて沈黙のまま観客の目の前に止まる。
難民であることを告げるリーダーらしき人物の重く、絞り出すような、しかし威厳に満ちた声音。
クローズアップされる人物の貌にみる深い悲しみと虚ろさ、その中に最後の微光を見いだそうとする悲痛な意志を表す目。
監督定番の長回しといわれるロングショットの長~